まず「どこがわからない?」と聞き返す。
「先生、わかりません」
今回のコラムでは、上記のような曖昧な質問をするお子さんに対して、どのように指導すればよいのか。
どう指導すれば抜群の学習効果を出すことができるのか、ノウハウのひとつをご紹介したいと思います。
冒頭に挙げたこの言葉は、家庭教師や塾の先生なら何度も生徒さんから聞く言葉です。また、保護者の方もご自身の経験としてこのように先生に質問したことがあるかもしれません。
私自身もこれまで何度も何度もこの言葉を耳にしてきました。
私はこのようなことを言われた場合、まず、次のように子どもたちに聞き返すことにしています。
「どこがわからない?」
そう聞くと次のような状態になることがよくあります。
「・・・。」
何がわからないのかわからない。
お子さんのこの現象から起きている原因のひとつに、そもそも何がわからないのかわからない、という状態になっていることが考えられます。
頭の中で漠然と「わからない」と思っており、何がわからないのかわからない状態で先生に質問しているのです。実は、先生としては、この状態のままでいきなり指導内容を教えてしまうことはよくありません。
なぜなら、この状態のまま、その問題について一からすべて教えてしまうと、先生からお子さんへ与える情報量が一気に増えすぎてしまいます。
情報量がありすぎるため消化することができなくなってしまい、わかったつもりになるだけで実際にわかってない、というよくある状態になります。
子どもたちは先生の説明を聞いている間は、なんとなくわかった状態になりやすいです。
ですが、実際にあとで自分でやり直してみると「あれ?なんだっけ?」という状態になってしまいます。
そのため、特に素直なお子さんの場合によくあるケースとしては、
「先生の説明はわかったのに。できないのは頭が悪いんだ」
と勘違いを誘発してしまうきっかけにもなっています。このままの状態で内容を教え始めることは避けたほうがよいです。
わからないところを特定する
では、どうするのかというと、こういった場合は、まずはじめに、わからないところがどこにあるのかを特定させることから指導していきます。
具体的には、その問題でつまづきそうな箇所を先生が予測して、一つ一つ質問を交えながらお子さんに聞いていくことで、どこがわからないのかを特定していきます。
たとえば、
- 「まず文章読んでみて」
⇒そもそも文章を読めているか
- 「何を求めたらいいの?」
⇒何がゴールなのか認識しているか
- 「図にできる?」
⇒図表表現ができるか
- 「公式覚えてる?」
⇒公式の暗記・記憶をしているか
- 「ここで使える公式はなんだっけ?」
⇒公式の選択・判断・適用ができているか
- 「この記号の意味ってなんだっけ?」
⇒記号を覚えているかどうか
- 「ここの単位は?」
⇒単位を把握しているかどうか
など、お子さんへの質問の種類は多岐にわたります。
この個々の質問に対して、答えることができなかったところがお子さんにとってわからないところになるわけです。1つだけのケースもありますし、2つや3つ以上の質問に答えられないケースもあります。
まずは、わからないところを特定させることを最優先に考えます。実際に内容を教えるのはこのわからない部分が特定されてからです。
以上のことをまとめると大きな指導の流れとしては、下記のとおりです。
◆ステップ1:
先生からお子さんに質問を繰り返すことで、どこがわからないのかを本人自身に認識させながら、先生側でどこかわからない箇所なのかを特定する。
◆ステップ2:
特定されたわからない箇所に絞って新しい情報を与える
この2ステップを経ることで、一からすべてを教えるときよりも情報量が減り、またピンポイントで指導することができるようになり、お子さん自身がどこを新しく学べばよいのかが容易にわかります。だからこそ、学習効果が飛躍的に向上するのです。
LFLの家庭教師では、
「先生、わかりません」
と漠然とした質問をするお子さんに対して、上記の2ステップを経て、丁寧にわからない箇所を特定し、指導しています。
最初から一気にすべてを教えるわけではないので、お子さん自身が自分で何がわからなかったのかが明確になり、頭の中がすっきりして整理されやすいのは言うまでもありません。
素人はすぐ教え始める。プロはまず特定する。
この指導方法は指導の素人の方からすると、
「え?ひどい!」
と思ってしまう方が少なからずいらっしゃいます。
「先生、わかりません。」
って聞いているのに、すぐ教えてないなんて、と考える方がいらっしゃるのです。
しかし、私は一からすべてを教える指導は生徒主体ではなく先生主体の指導だと考えています。
なぜなら、生徒の状態に関係なく、先生自身のペースで教えているからです。お子さんの状況を考慮しないのなら、先生が好きなように教えたほうが楽でしょう。
しかし、お子さんごとに理解の状況が違います。理解の仕方が異なるのです。
すぐ教えてしまう指導はその子の状況を無視した教え方であり、これは素人の指導法だと言えます。
誤解を恐れずに、たとえるなら、
「先生、体調が悪いです。」
とお医者さんに話したら、いきなり
「あなたはガンですので手術しましょう。」
を言われているようなものです。
検査などをして原因の特定をせずに、勝手に判断されている、という意味においては同じことです。
逆に、わからない箇所を特定して教える指導は先生主体ではなく生徒主体の指導だと考えています。
なぜなら、お子さんの現在の状態をきちんと把握した上での指導になるからです。
まとめ
LFLの家庭教師は、お子さんを中心とした指導法であるべき、と考えています。今後も先生主体ではなく、生徒主体の指導を行うことで、子どもたち自身のさらなる成長のサポートをして参ります。
もしお子さんが、そもそも何がわからないのかわからない、といった状況に陥っているようでしたら、お気軽にご相談いただけたらと思います。
そういったケースでは、いわゆる素人大学生にありがちな「普通の教え方」での学習は難しいでしょうから、指導法についての適切な理解のあるプロフェッショナルが指導したほうがよいのは言うまでもありません。
お子さんのわからないところがどこにあるのか特定しながら、丁寧に指導して、成績を飛躍的に伸ばして参ります。