やる気ってどこから出てくるの?
「うちの子、全然勉強が続かないんですよ」
「先生、どうしたら勉強が続くようになりますか?」
保護者の方からよくこのようなご相談をいただくことがあります。このご相談に対して、ある塾では次のような回答をしていました。
「勉強が続かないのはやる気がないからです」
「やる気を出してください」
これは本当に意味ある回答なのでしょうか?
「やる気を出せ。」と言われて、やる気になるなら誰も苦労しないです。私はプロとして活動している方の回答として、この回答はありえないと思っています。
やる気は大事です。何をするにも本人がその気にないならうまくいきません。
しかし、大事なことはやる気が見られないお子さんに対して「やる気を出しなさい」と言うことではありません。
何もやる気が出ないのは本人の責任だけではありません。やる気を出すメカニズムを教えてくれる先生にお子さんが巡り合えていないだけなのかもしれません。
そこで、このコラムではメカニズムのひとつをご紹介したいと思います。
行動するための明確な理由を1つではなく複数考えておこう
行動を継続的に行うために大切なことは次の2つです。
- その行動を行うための理由を明確にすること
- その行動を行うための理由を1つではなく複数考えておくこと
理由を明確にし、複数の理由を考えておくことがポイントです。
ここで実践例のひとつをご紹介します。
たとえば、よくあるこんな光景を思い浮かべてください。
「あなた、勉強してるの?」
とお母さんがお子さんに聞きます。お子さんはお母さんに次のように答えます。
「勉強、ちゃんとやってるよ!」
「もうすぐテストでいい点数取りたいからさ。」
テスト前にある、よくある光景ですね。そして、テスト後が終わりました。
「あなた、勉強してるの?」
とまたお母さんがお子さんに聞きます。そうすると次のようにお子さんはいいます。
「勉強してないよ」
「だってテスト終わったじゃん」
本当によくある光景ですね。結局、テストが終わると勉強しなくなるわけです。これでは継続して勉強している、とは言えません。。。
このお子さんは、テストが終わると勉強しなくなります。それは、勉強するための理由がひとつだけであり、その理由がテスト対策だからです。テストのために勉強しているのですから、テストが終われば勉強しなくなるのは当然です。お子さんの行動は何ら不自然ではなく、ごく自然の行動をしていると考えられます。
そこでこのようなお子さんには
- その行動を行うための理由を1つではなく複数考えておく
ことが有効です。
行動を行うための理由が複数あることで、たとえ一つの理由がなくなったとしても、別の理由がその行動を下支えすることができます。つまり、行動を継続することができるようになります。
それではもう少し具体的に以下の3つに分けて比較してみましょう。
- ひとつの行動に対して理由が1つ
- ひとつの行動に対して理由が2つ
- ひとつの行動に対して理由が3つ
パターン1:ひとつの行動に対して理由が1つ
先ほどのテスト前だけしか勉強しないお子さんのように、このパターンが最も行動が続かない状態です。また、子どもたちにもっともよく当てはまる典型的な状態と言えるでしょう。
今度は次のような場合を考えてみます。
・行動:毎日勉強している
・理由:受験生だから
この場合、受験生でなくなると、勉強しなくなってしまうでしょう。このお子さんが毎日勉強をする、という行動を支えていた理由が受験生にあるためです。何も理由がない状態で、行動を継続することほど難しいものはありません。
もし「なんとなく毎日勉強しています。」というお子さんがいらっしゃれば、それは習慣化している状態です。そのレベルに達しているのであれば継続して勉強し続けると思いますが、そのレベルまで到達していない場合は、ひとつの行動に対して、理由が1つしかないというのは、すぐにその行動を継続することができなくなる可能性をはらんでいます。これは非常に不安定な状態と言えます。
パターン2:ひとつの行動に対して理由が2つ
先ほどのパターン1よりも、行動が継続しやすい状態になりました。理由が2つあれば、2つの理由のうちの1つがなくなっても、もう1つの理由によって行動を支えることができるためです。
たとえば、次のような場合を考えてみます。
・行動:毎日勉強している
・理由1:受験生だから
理由2:お医者さんになりたいから
先ほどのパターン1との違いは、2つ目の理由である「お医者さんになりたいから」が加わっていることです。この場合、パターン1と違って無事に医学部に合格したあとも、勉強を続けることができます。医学部に合格することそのものだけが勉強する理由なのではなく、将来、お医者さんになりたいから勉強しているのですから。
だから毎日勉強しているわけです。
また、もし将来お医者さんになりたくなくなったとしても、きっと勉強を続けることができるでしょう。それは、それは自身が受験生だから、と思っているからです。
理由が2つあれば、どちらか一方の理由がなくなったとしても、もう一方の理由で行動を支えることができるようになります。そのため、パターン2は、パターン1よりも継続して行動することができます。パターン1よりも、より安定している、と言えます。
パターン3:ひとつの行動に対して理由が3つ
上記のパターン1・パターン2よりも、さらに継続して行動し続けることができるようになります。理屈はこれまでと同様です。3つある理由のうち、1つの理由がなくなってしまっても、他の2つの理由があります。この理由によって行動を支えることができ、継続することができます。また、2つの理由がなくなったとしても、残りの1つの理由があります。理由が1つあるために行動を支えることができるわけです。
たとえば、次のような場合を考えてみます。
・行動:毎日勉強する
・理由1:受験生だから
理由2:お医者さんになりたいから
理由3:楽しいから
先ほどのパターン2との違いは、3つ目の理由である「楽しいから」が加わっていることです。この場合、3つの理由があるので、「受験生だから」「お医者さんになりたいから」「楽しいから」のうちのどれか1つの理由がなくなっても、他の2つの理由で行動を継続することができます。
勉強が楽しくなくなってしまっても、「受験生だから」「お医者さんになりたいから」毎日勉強するでしょう。受験生でなくなってしまっても、「お医者さんになりたいから」「楽しいから」毎日勉強するでしょう。
3つの理由があれば、1つの理由がなくなっても残り2つの理由があるので、行動を継続することができます。また、同様の考え方で、2つの理由がなくなっても、残りの1つ理由があるので行動を支え継続することができます。
結果、パターン3は、パターン1・パターン2よりも継続して行動が続くようになります。
以上のように、パターン1・2・3と行動と理由との関係をみてきましたが、理由は、4つ、5つ、6つ、と可能な限り考えだしておくと、より行動の継続が強固なものとなります。理由の数に制限はありません。そのためできる限り多くの理由を考えだしておいたほうがよいでしょう。
ただ現実的には、いきなり3つも4つも理由を明確にすることはできないかもしれません。そんな場合は、ひとつずつでもよいですから、ゆっくりと理由を増やしていくとよいです。肝心なことはその行動を行う上で1つの理由だけで満足してしまい、さらなる理由を考えることをストップさせてしまわないことです。その行動を行っている間に、その行動を継続するのに必要な別の理由を作り出すことでより強固に行動を継続できるようになっていきます。
とにかく理由の数を増やし続けることが重要です。
理由の数を1つだけから2つへ。
2つだけから3つへ。3つだけから4つへ・・・
と次々に増やしていくことが行動を継続させる上での秘訣です。
「どうして○○をするの?」
「その理由を思いつく限り書き出してみようか!」
とお子さんに問いかけ、お子さんなりの理由をどんどん考えさせてみてくださいね。
LFLの家庭教師では、お子さんの現状にあわせて、こういった勉強を続けるためのコツもお話ししています。お子さんが継続して勉強し続けることができるようにサポートしています。お気軽にご相談いただけたらと思います。
WRITTEN by SAITO